近年、欧米や北米を中心に、世界的に大麻使用が合法化していますが、なぜ今になって合法化しているのか? そもそも大麻とは何か?どんな効果があるのか? そんな疑問と各国の大麻を取り巻く環境をご紹介いたします。
※この記事は大麻使用を推奨するものではなく、現時点での各国の状況について扱っています。
大麻とは何か?
大麻とは大麻草のことで、日本を初め世界中に自生している草で、人類が栽培してきた最も古い植物のひとつです。使用用途は多岐に渡り、主に『産業用』『医療用』『嗜好品』に分けられます。
『産業用』では、しめ縄、建材、衣類として使用され、『医療用』では鎮痛、沈静、催眠、食欲増進、抗がん、眼圧の緩和、嘔吐の抑制剤として使用され、『嗜好品』では葉、樹脂、花などから生成したマリファナ、ハシシ、チャラスなどを燻して吸引し使用されています。当然のことながら、日本では大麻の所持、譲り受け、譲り渡しは違法です。
また、大麻にはCBD(カンナビジオール)、THC(テトラヒドロカンナビノール)などの成分が含まれていて、THCは多幸感を覚えるなど向精神作用があり、日本では規制の対象とされています。
一方でCBDは非精神活性作用があり、リラックス効果や抗がん剤治療での痛み止めに効果があるとされています。
日本では、CBD成分は大麻取締法の規制対象外ですが、医療品として認可されているわけではありません。
なぜ合法化しているのか?
各国で文化的背景、宗教的思想などが異なるので一概には言えませんが、規制が緩み、合法や非犯罪化している背景には『ハードドラッグの抑制』、『犯罪組織の収入源抑制』、『医療使用の有効性』などの理由が挙げられます。
『ハードドラッグの抑制』に関して、麻薬にはハードドラッ<グとソフトドラッグが存在し、前者は覚せい剤、ヘロイン、コカイン、モルヒネ、LSDなど、後者はハシシ、マリファナ、マジックマッシュルームなどが挙げられます。
欧米諸国ではより深刻な問題となるハードドラッグへの導入を抑制するため、ソフトドラッグであるマリファナをあえて合法化または非犯罪化し、ハードドラッグの利用を抑制する狙いがあると言われています。
『犯罪組織の収入源抑制』では、マリファナ、ハシシはマフィア、麻薬カルテルなどの犯罪組織の重要な資金源となっているので、政府や許可団体が一定の管理下で消費をコントロールし、違法売買をなくして市場をクリーンにすることで、犯罪組織の弱体化を目指しています。
『医療使用の有効性』では大麻に含まれる成分が多発性硬化症、てんかんなどの治療に効果があると期待されてます。
このような背景から、一部の地域や国で、近年ドミノ効果的に規制緩和の動きが見られます。
大麻が使用可能な国
北米・中南米
アメリカ合衆国
現在、アメリカでは36の州で医療目的での使用が可能で、18の州では嗜好品としての使用が可能です。
アメリカでは連邦法と州法で大麻の扱いが異なり、連邦法では大麻の使用・所持は禁止されていますが、州法ではいくつかの州で医療や嗜好品としての使用が可能です。
こうした矛盾から、2020年12月には大麻を連邦法で合法化する法案が可決されました。また、大麻関連の株(ETF)もあり、今後より緩和路線に舵を切る可能性があります。
カナダ
カナダでは、2018年10月に大麻の嗜好品使用を完全に合法化しました。18歳以上を対象に、公共の場で最大30グラムまでの大麻を乾燥または非乾燥の形で所持する事ができます。また、自宅栽培も制限範囲内で許可されています。ただし、政府から認可を受けた小売業者や生産者からしか購入する事はできません。
中南米
ベリーズ
2017年、個人消費を対象に私有地での所持または使用が最大10グラムまで認められましたが、公共の場での所持、または使用は罰金や懲役刑が科せられます。
エクアドル
大麻を違法に栽培、または販売した場合、有罪となる可能性がありますが、個人消費の場合は最大10グラムまで所持することが許可されています。しかし、栽培や販売については厳格な決まりが設けられています。
ジャマイカ
2015年に宗教(ラスタファリ)、医療目的の使用が非犯罪化しました。嗜好品としての使用は禁止されていて、公共の場で喫煙すると罰金が科せられます。しかし、56グラム以下の使用なら5ドル程度の罰金となり、容認傾向が強いと言えます。
ウルグアイ
ウルグアイでは2013年に嗜好品として大麻使用を合法化した世界で最初の国となりました。18歳以上の国民や2年以上在住の登録居住者は郵便局に登録することで、月に最大40グラムまで薬局などでマリファナを購入できます。
メキシコ
2021年より18歳以上を対象に最大28グラムまで嗜好品としての使用と制限範囲内での自宅栽培が合法化されました。また、2017には1%未満のTHC含有量の医療使用が合法化されました。メキシコではカルテルと呼ばれる反社会的勢力が麻薬利権を牛耳っていてため、合法化により犯罪収益を減少させる目的があると言えます。
コスタリカ
法律上では大麻の「少量」以上の生産、所持、販売は違法です。しかし「少量」の正確な量が述べられてないため、多くの国民に1〜8グラム程度の個人消費であれば、所持および使用は合法であると解釈させています。また、統計によるとタバコ喫煙者より、マリファナ喫煙者が多いデータもあり、文化的に寛容な背景があると言えます。
コロンビア
特定の医療目的および個人消費に限り最大20グラムまでの使用が非犯罪化しています。しかし、公共での使用や商業目的でに売買は違法です。
アルゼンチン
商業目的での栽培・販売は違法ですが、5グラム以下の個人消費は合法となとみなさる傾向が強いようです。また、2017年には医療目的での使用が認められました。
ペルー
こちらも2017年に医療目的での大麻使用が合法化しました。また、8グラム未満の個人消費は非犯罪化していますが、栽培や販売は違法となり懲役8〜15年の実刑です。
ヨーロッパ
オランダ
マリファナに寛容なイメージのあるオランダですが、法律上では所持、生産、売買は違法です。
ただし、個人消費を目的とした使用は非犯罪化していて、コーヒーショップで気軽にマリファナを購入できることから、世界中の観光客に人気の目的地です。また、個人消費の場合でも18歳未満、5グラム以上の使用、5つ以上のプラント栽培は違法です。
ジョージア
2018年に嗜好用のマリファナ使用が合法化されました。ただし、栽培と販売は違法です。
ベルギー
大麻の販売および所持は犯罪ですが、18歳以上を対象に3グラム以下の個人消費は非犯罪化しました。また、医療目的での利用は限定的ですが合法です。
ポルトガル
2001年に個人消費を対象に、所持および使用が非犯罪化しました。また、医療目的での大麻使用は2018年に合法化され薬局などで処方されますが、医療目的での個人栽培は違法です。
スペイン
2017年に個人消費を目的とした私有地での使用、栽培は合法化しましたが、営利目的での販売や公共の場での大麻使用は違法です。
チェコ
東のアムステルダムと呼ばれている首都プラハ。ここでは2010年に個人消費を対象に最大10グラムまで所持および使用、少量のプラント栽培が非犯罪化し、2013年には医療大麻が合法となりました。大量所持は違法です。
イタリア
個人的な使用のために少量を所持することは違法となり罰金の対象です。ただし、医療目的での使用、麻の建材利用などの産業目的での栽培などは合法です。
スイス
法律上は個人消費は違法となり、所持は罰金の対象ですが、THC成分が1.0%未満の場合は違法とみなされません。また、医療目的での利用も合法で低THC大麻を販売している認可小売業者は140社を超えています。
アフリカ
南アフリカ
2018年に個人消費のための使用、所持、栽培が非犯罪化しました。ただし、公共の場での喫煙は処罰の対象です。
モロッコ
モロッコでは大麻の使用、販売、購入、栽培は違法ですが、2021年5月モロッコ議会は、医療、美容、産業目的での大麻の使用を合法化しました。また、世界屈指のハシシ(大麻樹脂)生産国の1つでもあります。
オセアニア
オーストラリア
首都キャンベラを含むオーストラリア首都特別地域(ACT)を除いて、ほとんどの州では違法のままですが、ACTでは2019年9月に個人消費が合法化されました。この地域の18歳以上の居住者は 最大50グラムのマリファナを所有でき、1人あたり2つのプラント栽培、または1世帯あたり4つのプラント栽培が自宅で可能になりました。また、2016年には医療用大麻が合法化されています。
アジア
カンボジア
法律上では違法であるが、かなり寛容な背景があります。街には「ハッピーピザ」や「ハッピーシェイク」と書かれた料理やメニューを見ることができ、料理やドリンクには大麻の精神活性作用成分であるTHCが含まれています。そういった背景から外国人旅行者が気軽に大麻を入手できますが、警察からの賄賂要求、場合によっては刑務所に収容されるといった可能性があります。
ラオス
ラオスでも法律上は禁止ですが、公然と販売されてて気軽に大麻が入手できる環境です。しかし、警察からの賄賂要求や逮捕される可能性もあり、密売のような深刻な事件に関与した場合、死刑も適用されます。
各国の大麻を取り巻く環境は日々変化します。これらの地域に行かれる予定の方は、甘い誘惑があることに十分注意しましょう。
仮に、日本人が海外旅行時に、その国の法律の範囲内で大麻を所持および使用したとしても、「国外犯規定」が適用され、帰国時に大麻取締法の処罰の対象となりえます。
以上のことを注意し、海外旅行時には最新情報をアップデートしてトラブルを未然に防ぎましょう。